ヒーローがみえた話
今日ヒーローを見た
小学生の卒業文集で彼は「箱根駅伝に出る!」と書いていた。
小学生ながら親の影響で箱根駅伝がどういうものか知っていた私は、すごいこと言うなあと感じたのと同時に、どこか叶いっこないのに、とも思っていた。
文集の最後、白黒ページの中の将来の夢、なぜか彼の夢を私は鮮明に覚えている。
私も自分自身の夢を書いていたけれど、心でどこか無理だろうって思っていた。
だから、彼が本気で、ならない訳がないという風に書いている自信がとても羨ましかったのだ。
彼の字は濃くてとても大きかった。
中学生に上がり、私は転校することになった。
文通やメールのやり取りをしていた友人から、彼はどうやら高校は陸上の強豪校に進学すると、そしてそれは全国で有名な駅伝強豪校だと耳にした。
その高校は私の引っ越し先の県にあり、夕方のニュースなどで彼を目にする機会が何回かあり、着実に彼は夢を自分のものにしていった。
でも、まだどこか、まさか箱根に出るなんてことないだろうなだなんて思っていたの。
けれど、今日ほんの一瞬、たった何十メートルの距離、彼は箱根の道を走っていた。
それはもう驚いた。
だって、すごい、夢を叶えている。
叶いっこないのにって思っていた私と、叶わないはずがないと思っていた彼の差を感じる。
小学生から大学生までの間にこんなに差ができていた。
ただなんとなく同じクラスでなんとなく人気者でなんとなく足が速くてなんとなくただなんとなくただの同級生だけど。
なぜか死ぬほど嬉しくて、声を出して泣くほど眩しくて、そして胸が痛いほど悔しかった。
まるで少年漫画の主人公、見ているみんなが感動し「頑張れ」と応援してしまうようなストーリーを実況者は話す。
切磋琢磨できる仲間と笑いあって叫んでいた、何を思ったのだろう。
いつも口にしていた夢を叶えていた、いや分からない、彼にとっては叶えていないのかもしれない。
でも、眩しかった。
いつもいつもステージにいる人ばかりを見ていた私にとって、現実からビンタされた気持ち。
ヒーローだと思った。
重岡くんがデビューしたときも感じた、夢を叶えた人を見て私はどうするんだろう。
まだ答えは出ていない。
でももうすぐ、もうすぐ、出そうな気がする。